北京豊台野球学校来日記録
 2006年10月、北京豊台にある野球学校の生徒(日本の中学生に相当)とおなじく北京西単小学の生徒
による訪日団がありました。日程は6日間。私はうち二日間に参加しました。私が参加した両日は練習
と交流試合がありました。そのあたりのことを簡単にご報告いたします。

10月7日
 前夜関東地方に降った大雨のため、常磐線が水戸取手間で運転をとりやめるような状態(だから前日
行ったディズニーランドはむちゃくちゃすいてて楽しかったのだそうです)。練習試合を予定していた
のだが、グラウンドがとてもつかえる状態ではないらしく、取手二校の体育館を借りての練習に変更。
対戦相手のはずだった龍ヶ崎市城西中学との合同練習。豊台学校校長によればバットを振るのはおよそ
3ヶ月ぶり。いままで練習をしていたグラウンドは工事のためつかえなくなったからだという(多分オリ
ンピックのため)。それにしてもバット振るぐらいはできるんじゃないかと思うが…。なかには「グラ
ブわすれてきちゃった」という生徒もいて…野球しにきたんだよねえ?

 午後は交流昼食会。そして水はけのいいグラウンドをもつ城ノ内中学に移動し、ようやく試合。城西、
城ノ内両中学と5イニングづつおこなう。

  【赤いユニフォームが豊台、白いユニフォームが西単小学の選手】
 このときにあらためて選手をながめたのですが、そろっているのはユニフォームの上着とズボンだけ。
アンダーシャツはなく、靴下もバラバラ。なかには靴下がみじかすぎて足首の肌が露出している選手も。
お金がなくて買えない、ってんじゃない。物がないのです。中国では野球はごくごく少数の人のするもの。
値段をうんぬんする以前にアンダーストッキングだのアンダーシャツだのは市販していない、少なくとも
スポーツ用品店にいけばぽんと買えるものではないということなのであり、それは野球学校でも例外では
ないのであった。


 試合がはじまると異様な光景がくりひろげられた。少なくとも中国の選手にとっては。
 試合中常に声を出し続ける日本選手。さらに大声でしかりつける監督。その指示を「はい!」と聞く選
手。どれも中国では見られない光景(なのだそうです)。守備が終わってベンチにもどってくるなり監督
無視して飲み物に殺到…だもんなあ。監督が絶対的な権威をもつ日本の学生野球の現状も私は決して好き
ではないが、グラウンド内のことはそっちのけのベンチはうけいれがたいなあ。やっぱり声は出ていない
と野球って感じがしない。
 試合がすすんでくると次第にグラウンドのプレーに対して声が出るようになってきました。そして、
「試合どころか練習もしばらくしていない」(校長談)わりにはどうにかこうにか試合になっている。ピッ
チャーはなかなかストライクが入らず、守備も全然動いてない…なのに点はとられない…不思議な試合
です。しかしやはりピッチャーの違いは顕著に出ましたね。日本側のピッチャーはとにかくストライクが
とれる。試合のテンポがよい。

 しかしそれでもなんとか試合の形はととのい、1点をあらそう展開となった。

夕闇せまる中のゲーム

 第一試合は引き分け、第二試合は1−0の負け(だったはずです。スコアをつけていないのではっきり
わかりません。ご記憶のかた、ご訂正くださるようお願いいたします)。

 しかし、自分の不手際をごまかすわけではありませんが、勝敗うんぬん以前に、日本の野球部の様子、
実戦の際の基本姿勢(たとえばキャッチャーがメットをかぶらず守備につこうとするのを監督も制止しな
い。ランナーが出ているのにコーチャーズボックスにだれもいない…)、プレースタイルの違いなどを肌
で感じたのではないでしょうか。知識としてはいろんな形で入ってくるでしょうが、やはり自分の目で見、
肌で感じたことは印象が強烈でしょう。

10月8日
 朝から快晴。昨日の酒もぬけ(いや、わたしのことですよ。選手はちゃんと早寝しました)、さわやか
な朝。ただすこし眠い。
 選手たちはまずバッティングセンターへ。スクリーンにうつる投手の投球フォームにあわせてボールが
出てくる、バーチャルバッティングマシーンのあるところ。「中国にはこういうものはないだろうからね」
ということだからなのだが…うちの近所にもそんなものはおまへん…。ここを一時間貸し切りにしてバッ
ティング練習をおこなう。

 バッティング練習終了後、取手二校へ移動。そのグラウンドを貸してくれるだけではなく、同校のコーチ
が中国野球少年たちに練習法を指導してくれるというのです(高校生と一緒に練習することはできないので
コーチだけ)。ちょっと個人的なことを言うと、わたしはほとんどこのために参加しているようなものです。
野球経験者で中国語をかじっているのは今回のメンバーのなかではわたしぐらいなものですから。
 あいさつがおわり、まず準備運動。これが最初の衝撃でした。数十分にわたり念入りにウォーミングア
ップ。こんなに時間かけてウォーミングアップしたことはなかったのでしょう。特に柔軟体操は普段ほと
んどしていないようで、そのおおさに参っていました。まあ私の以前所属していた野球部もそんなに長い
こと準備運動はしませんでしたがね(練習時間が短いから)。私もやったことないような運動もいくらか
ありました。
 そしてようやくキャッチボール。しかしこれも簡単には終わりません。ボールを投げる姿勢、とる姿勢
からの指導。それもまずは至近距離から徐々に距離を広げていく。それも好きなように投げさせ、とらせ
るのではない。投げるときの体勢が悪いとみるや、足を一切動かさずに体の回転で投げる練習をさせ、4
人一組でのボール回しあり…守備位置についてのノックにうつるまでゆうに1時間は費やしました。ノッ
クもバッティングも懇切な説明と指導があり、少年たちにとっては貴重な経験になったはずですが、それ
よりも強く彼らの印象に残ったのは、準備運動と基礎にいくらでも時間をかけ、基礎をこそおこたらない
態度だったのではないかと思います。願わくは今日限りの体験ですませずに帰国後もおぼえている範囲だ
けでもつづけてくれること、そして今回訪日できなかった仲間たちにも広めてもらうこと。


 私自身にもたいへんよい経験になりました。本当に「まじめに」
野球をやっていたころからはかなりの時間がたち、最近ではバッ
ティングセンターに行ったり、試合まえに軽くウォームアップする
程度。それでむかしの貯金で試合にのぞむものだから、自分の
あたまのなかの理想の動きと体の動きは当然かみあわない。ストレ
スもたまるわけです。草野球ではあんまりまじめに練習やトレーニ
ングをすると笑われてしまう傾向もありますが、笑われる恥ずかし
さよりも、試合で自分の思い描いた動きをできるような準備をする
ほうがよっぽど大事だなと痛感した次第です。そのほうが野球は
たのしいのですから。
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