中日交流少年棒球交流大会
 2006年3月31日から4月4日にかけて中国山東省済南市で開催された、日中両国少年野球チーム
の交流会の様子をご紹介します。日本側は茨城県龍ヶ崎市スポーツ少年団、迎える中国側は山東
省済南市の展望少年野球隊。展望野球隊は、済南市内の十四の小学校の野球チームにコーチを派
遣するなど、野球の活動に全面的な支援をおこなっています。今回はその一環としての、また昨
年夏に龍ヶ崎市を訪問した返礼としての、そして山東省で開催するものとしては史上初の少年野
球交流会です。

歓迎交流会
 双方の代表者や各方面関係者らのあいさつ、日中双方の少年たちの準備してきた歌やおどりな
どの出し物。
 
 わたしですか?うろちょろしながら写真とって、食べるもの食べて、飲むもの飲んで、適度に中国野
球関係者と交流して……と思っていたのですが…突然壇上に呼び上げられ、通訳のまねごと、裏方とし
て出し物の準備…など突然えらくいそがしくなりました。ヒマそうに見えたんでしょうね、済南市とも
龍ヶ崎市とも直接縁があるわけでもなく、もちろん選手でもないわけで…。特に役割もなくふらふらし
てたから…。で、突然そんな大役をあたえられてうまくいくはずもなく、事実ズタボロでした。もう泣
きたいぐらい。反省、というよりもせっかくの交流会をぶちこわしてしまったんじゃないかという不安
が先にたちます。指名したほうが悪いんだ!なんて割り切るなんてとてもじゃないが、無理。
 結局歓迎会ではひと口もなにも食べられなかったので、散会後、中国側代表の王主任に飲みに連れて
行ってもらう。明日はいよいよ野球。今日の失敗をわすれるわけにはいかないが、明日は明日である。

予想を超えた貴賓待遇
 4月1日朝、ホームステイで中国選手の家に泊まっている選手たち以外のホテル宿泊の関係者たちはバ
スで会場へむかう…となんと途中から警察の先導が…。

 済南市政府の後援があるとは聞いていましたが…。こんなちっちゃなバスにパトカー先導とは…。そ
れにもびっくりだが、パトカー2台の間をぬって追い越しをしていった一般車にもっとびっくり。
 【下にも置かぬ歓迎ぶり】

 会場は済南市のある小学校。中国には野球専用球場が11しかないそうで(どの程度の規模のものをさ
して言っているのかはさだかではないが、少ないのは確か)、済南にももちろんなく、普段は小学校の
グラウンドで練習をしているそうです。そして今回の大会のため特別に野球場仕様に改造したとのこと。
 
 そしてわたしにはあらたな仕事が…。選手の練習を手伝っているちょうどそのとき、開会式の関係者
あいさつの原稿をわたされ、「訳して」と…。たしかに昨晩、「原稿があればもうすこしは…」とは言
いましたが…
 そして開会式直前には式次第も渡され、結局司会進行の通訳もつとめる。残念なのは選手たちの練習
を見る時間が少ししかなかったこと。式はいかにも中国的!というムードを醸し出し、平和におわる。

初戦−エース快投!
 開会式直後の第一戦、日本チームはまずエースを投入(ここではひとまず選手の氏名の公開はひかえ
ます。忘れたわけじゃありません)。このエースがよかった。茨城から成田、成田から青島への飛行機、
青島から済南へのバス移動、という前日の長距離・長時間移動のつかれを感じさせない。投球の八割が
ストライクというコントロールでどんどん追い込み、打者に的をしぼる間を与えない。打線も相手投手
のコントロールがさだまらないのに乗じて四球でランナーをため、初回だけで8点。反撃をヒットとエ
ラーがらみの3点におさえ、5回打ち切りながら11‐3の大勝。
 
 なお、わたしは攻撃中はサードベースコーチスボックス、守備中はベンチから声を出しつづけていた
ため、試合の写真は一枚もとれませんでした…。そういうわけでここでも試合のようすはお見せできませぬ。

 (↓試合後、小学校の食堂での昼食のようすならお見せできます)
 

交流会−健全と不健全と
 午後、選手はそれぞれホームステイ先の選手・家族の人たちとすごす。ほかの大人たちはようやくゆっ
くり休んだあと、バスに乗り夕食(結局のところ飲み会)へ。泉の都・済南の中でもその清水で有名な
[足勺]突泉公園のなかへ。すでに閉園時間をすぎたらしく、園内はひっそりとしている。そのなかで明
かりをはなつひと棟の建物へみちびかれると、そこが食堂になっており、すでに日中の選手数名とその
家族がまっていた。かくして夜の公園内での内輪での宴会となった。
 中国での宴席というと例によって酒とタバコ。特に酒は前日のビールからレベルがあがり(?)白酒
に。白酒は中国の蒸留酒です。北方で「酒」といえばこれが出てくることが多いわけですが、アルコー
ル度数が高い。一般に30度はくだらない。北京で有名な「二鍋頭」は56度。まあそれはおいといても、
本日のご当地白酒「[足勺]突泉」も36度。わたくしども遠来の客は恰好の標的になります、特に成人男
性のみなさま、ご注意ください。選手もいるタテマエ、あんまり飲んだくれたくはなかったのですが、
そういうわけにもまいりませんでした。ただ、酒をのがれて様子を見に行った選手たちが、さっそく昨
日の歓迎会でのおどりをいっしょに練習するなど、すっかりうちとけた雰囲気。ホームステイを通じて
親しくなっているとはいえ、交流というとすぐにことばに頼ってしまう私としては見習うべきことも感
じました。
 そういえば不穏な話も耳にしました。今日のゲームでは日本のピッチャーに手も足も出なかった中国
側は野球のため北京の中学に進学した選手を出場させるとか。…ううむ…思わず歓談中のエースに「あ
したも投げてくれ」と頼んでしまったよ。今日は明らかに六七分程度の力で投げてたからまだいけると
思うんだが…。宴会のあとのことはあまりよく覚えていない。気づいたら翌朝でした。

第二戦−ハンデ戦?
 二日目はパトカーの先導もなし(道がそんなにこんでるわけでもないんで、そもそもいらなかったん
ですけどね ^^;)。
 私たちはよくわかっていなかったんですが、この日の試合が本戦だったらしいのです。メディアの取
材もきているらしい。わたしもにぎやかなおっさんとしてどこかに写りこんでいるかもしれません。

 

 さて、日本チームは二本柱のもう一人のほうを先発投手として送り出しました。ほかの野手は変更な
し。選手の数がぎりぎりなので…。昨日のピッチャーは今日はキャッチャーです。この時点ではこの日
一試合やるのか、二試合やるのかわかっておらんので投手交代機も不明です…。

 

 たしかにあちらには体のでかい選手がふえています。対してこちらは少数精鋭(?)、あとのない10人。
 ところが先攻の日本チーム、なんと3点を先制。たしかにヒットもつまったあたりで、決して楽にとっ
た点ではないけれど、ともかく先制。
 日本先発も、昨日エースほどの球速はないものの、丁寧に低めに球をあつめ、中学生相手にも打ち込ま
れない。
 しかしそのまま試合は膠着状態に。昨日はほとんどノーサインだった日本側もバント、盗塁といくらか
作戦らしいこともするものの、得点につながらない。4回までに1点を追加したものの、中国チームに1
点づつじりじりと追い上げられる。さらに4回裏中国の攻撃中、仰天発表が…。
 責任者の王主任が私を呼んで言うには「今日は二試合目はなし。この試合を7回までやる」…そうか、
試合まえにイニング数も決めてなかったのか…(汗)。となると投手交代も考えねばなるまい・・・。なん
とかこの回だけはもってもらいたい、ここで代えたくはない。その気持ちが伝わったのかどうかはわから
ないが、ピンチを切り抜けてもどってきてくれた。ナイスピッチングでした。いや、ほんとに。
 

 5回から日本チームは投手を交代。昨日完投したエースを投入した。
 一方攻撃のほうではじりじりと追い上げてくる中国チームをかわすべく、追加点をとりにいくが…。昨
日は大差がついて非常に楽な試合展開で、私の指示も「追い込まれるまでは打てる球だけ打てばいい」と
か、まあおおざっぱなものでした。基本的に盗塁もフリーだったし。この試合ではじめて「マジメ」にサ
インを出しましたよ、あたしゃ。盗塁のサインでした。もちろんカウントも、相手キャッチャーの様子も
考慮して出したサインでしたが、いや、もう成功するまではドキドキもんです。傍から緊張が見透かされ
るんじゃないかと心配になったぐらい。よく、「サインを出したベンチが悪い、というぐらいの気持ちで
いきました」なんて選手のコメントがあるけど、たしかにそうですね。もし失敗ても選手を責めてる余裕
なんてなさそうだもの。
 もうひとつ迷ったのは、1点差の最終回表、走者三塁の場面。打者を考えたら内野ゴロ、スクイズでも
1点、という場面だったんですが、結局スクイズのサインは出せなかった。というのもサードランナーが
メンバー不足のため急遽加わってくれた女の子だったのです。四球で出塁し、どうにかこうにか三塁まで
やってきた子。ここでスクイズなんてやっていいものかどうか…?迷いました。たしかに1点ほしい場面
ではあるのです。でも普段野球の練習をしていない子に、「ピッチャーが投げたらスタート。バッターが
バントしてフライだったらすぐバック。空振りでもバック。キャッチャーがこぼしたらつっこむ」なんて
ことを一度につめこめるのか?…と逡巡しているうちに沙汰やみにしてしまったのです。そしてとうとう
この回も追加点なしに終わる。

    

 そして最終回、やたらと体格のいい選手(例の中学生?)の猛打にあい、同点に追いつかれたあと、さ
らにランナー三塁のピンチ。ここで一点取られるとサヨナラ負け…。当然ベンチは内外野ともに前進、バッ
クホームの指示を出すが…打者の放ったショートゴロを一塁に送り…その間に三塁ランナーが生還…試合
終了。一瞬選手もわかっていないようだった。いまさら文句を言ってもしょうがないが、やはり事前にイ
ニング数ぐらいは決めておかないと…ここで最終回、サヨナラだとわかっていたのかいなかったのか…。
もちろんベンチが注意を喚起すべきことでもあっただけに悔やまれる。でも選手はそんなに悔しがってな
かったような…。まあ中学生出してきてたものな。いちばん悔しがってたのはオレだったり。

古田の気持ち、城島の気持ち
 午後は本来観光でした。でも選手たちの「もっと野球をやりたい」との熱意のもと、延長が決定。予定
通り観光をおこないたい主催者側(その気持ちもわかるんだけどね)の「日本対中国で1イニング、混合
チームで1イニング」の提案に対し、せめて全員が打席にたてる3イニングやりたい、と主張し、受け入
れられる。
 まず3イニングの日本対中国。中国チームは全員が中学生。グラウンドが小さく見えた。小学三四年生
もまざっている日本チームの選手は「そこまでして勝ちたいのかなあ」なんてこぼしていました。こうい
うとき、ほんとうに素直です。私も正直「そこまでしなくても…」と思っていたので、「まあまあ昨日あ
んまりにも大差がついたから…」となだめることしかできなかった。
 そしてもうひとつの問題。わがチームにピッチャーは二人。片方が投げるときにはもう片方がキャッ
チャー。うつくしい友情なのですが、この試合はエキシビジョンということもあり、どちらももうキャッ
チャーはやりたくない様子・・・「やってください」てんでなんと私が約4年ぶりの試合でのマスク。攻撃
中にはやはりベースコーチにはいり、「打たない」って言ったのにとうとう打席まで立ちました(向こう
が中学生出してくるならこっちも…と選手は思ったんでしょうね)。なんだかたいへんなことになった…
と思いながらもすこし楽しかったりもしました。結局この試合も日本の力負け。

 第二試合は日中混成チーム。両チームの選手がまざっていっしょにキャッチボールをしているのを見て、
いい光景だなあ、なんてしみじみ思ったものです。
 混成チームでもやはりキャッチャーだけ代理でつとめました。ピッチャーはもちろん日本人、中国人両
方。そういえば両チームともキャッチャーがあまり声を出していなかった。イニングがはじまるときは私
なんかはまず大声で守備陣を鼓舞するようおそわったもんだが…。ええい、いいや、やってしまえ。普段
耳にしてない選手はなにがおこったんだと思ったろうが、これが私のスタイルだ。最初は反応も鈍かった
が、アウトをとるたび、ランナーが出るたびに状況をつたえ、プレーの確認をしていることに気づいてく
れたのか、だんだん中国の選手も反応してくれるようになった。プロならいざしらず、草野球ではカウン
トも状況も勘違いしやすい。やっぱりやったほうがいいと思うよ。
 そしてもうひとつ悪い癖がでました。途中から出てきた中国の左腕投手。なかなかいい球を投げるのだ
が、球がもうひとつのびてこない。ボール球もおおい。で、さっそくマウンドへ行ってひとことふたこと
アドバイス。いつも投手に言っているようなことを言ってきました。中国語で野球教えられるってことで
すこしいい気分になってたのかな。まあその投手もそれにこたえるピッチングをして抑えてくれたのでよ
かった。この試合で私はようやく勝ちチームに入れたのでした…って、当初の目的と違うよなあ…。

    
   記念撮影

そしてさよなら
 野球の部分はこれにて完了。そして、時間的には相当無理があるのに観光を強行。一同名山・泰山…の
ふもとにいって写真をとって帰ってきました…。
   泰山を背にして

 晩餐は北京ダック。思い切り食べようと思っていた私にふりかかってきたのはやはり通訳。それだけな
らいいんですが、白酒ぜめ。正直今日はほんとにダメだったんです。それなのに…。2日野球、飲みのく
りかえしで体は悲鳴をあげてました。それなのに…。今晩の夜行で青島へ向かうはずでした。それなの
に…。ダメなんですね。いったん「ヤツは飲む」となるとどんなにことわってもダメなんです。中国には
じめてきたときから8年。はじめて中国で「いじめだ…」と思いましたよ。選手のまえでさんざんに酔っ
払ってしまったしなあ。最悪の別れかもしれん。酔いつぶれなかったのがせめてもの救い。中国チームの
日本人コーチもひどく酔っていました。はげしく別れを惜しんでくれたのが印象的です。彼は元気でやっ
ているだろうか?
 結局宿で酔いつぶれてしまった私は中国チームの王勇コーチにつきそってもらって翌朝のバスで
一行よりはやく帰途に着いた。怒涛の4日間、とともに濃密な4日間。つい二三日まえのことが相当むか
しのように感じます。ひょっとしたら酒のせいかもしれないけど…。
 中国では野球はまだまだ金のかかる金持ちのスポーツ。でも野球の普及に熱心な大人たち、野球に熱心
なこどもたちがたくさんいることは肌で感じた。日本人の多くが思うような、「国にやれ、っていわれて
強化されてるだけなんじゃないの」というのとはまた違った野球が山東にはありました。国に保護される
どころか、私財を投じてやっている人がいる。野球が好きな人が中国にいるかぎり、私はその人たちと野
球を通じてかかわって生きたい、つよく思ったものです。そして飛び入りの素人コーチ・素人通訳を受け
入れてくれた日本チームのみんなにも、心からお礼をもうしあげます。 inserted by FC2 system